2013年11月22日金曜日

50%費用削減を目指すSeagete Kinetic登場!-SDS4-   

HDDベンダーSeagate Technologyから、新しいアプローチのオープンストレージ構想が発表された。Seagate Kinetic Open Storageと言う。Kineticとは、ギリシャ語で「運動」(knen動く+-tic=運動の)を意味し、既存データの多くがクラウド上へ移行するムーブメント(Movemet-運動)が起きていることから名付けられた。つまり、ストレージシステムのCloud Data Center化である。

=Seagate Kineticの斬新性とは何か?=
Kineticのアーキテクチャーはこれまでのものとまったく異なる。ただ、全てのデータが対象ではない。ストレージに蓄えるデータはオブジェクトのみだ。これまでデータの多くは、ファイル形式のデータとしてストレージに格納されてきた。しかし、ビデオや写真などのデジタル化が進み、さらにクラウド化が進展して、これらのデータはオブジェクト指向となった。Amazon DynamoOpenStack SwiftHadoop MapReduceGoogle BigTableなどである。この傾向はデータベースだけではなく、アプリケーションも同様だ。オブジェクト指向データベースには、Get/Put(読み書き)、Delete(削除)はあるが、変更(Update)はない。

=Object DBとKey Value Store=
下図の左で示すように在来型システムは、Server、Storage Server、Deviceの3層ハードウェアからなり、さらにServer内にはApplicationとFile Systemのレイヤーがある。この実質4層に積み上げられたソフトウェアとハードウェアを介して、データはアプリケーションとストレージ間を行き来する。これがこれまでのファイルアクセスの仕組みだ。しかし、オブジェ クト指向のアプリケーションとブロックストレージならこのような面倒はない。Kineticでは構造を単純化して、下図右のようにTCP/IP/GbE(Gigabit Ethernet)を介した2層とする。つまり、センター内のようなGbEならベストだし、クラウド経由でも構わない。 Kineticのオブジェクト指向アプリケーションは用意されるKinetic Library(API&SDK)を使って、オブジェクトデータを直接GbE経由でディスクドライブにアクセスする。ここでデータの保存方式はNoSQLの代表とも言えるKVS(Key-Value Store)だ。周知のように、KVSは任意の保存データ(value)に対し、対応する一意の標識(key)を設定し、これらをペアで保存する。技術的にこれが可能となれば驚くほど効率が良い結果が生まれる。何しろ、Storage Serverが無いだけでも、機器費用やスペース、それに運用費が削減でき、運用のお守も要らず大助かりだ。加えて、パフォーマンスは間違いなく良い。

またインターネットを介すことで、どのアプリケーションからも、どのオブジェクトにも自在にアクセスが出来る。同じセンター内の異なるサーバーからGbE経由は勿論、世界に散在するサーバーからだって可能だ。そして出来上がったストレージはまったくのスケールアウトである。

=Cloud Data Center構想= 
今回の発表で大事なことは、技術的なKineticの革新性だけでなく、プログラムの全体である。 

<オープン> ・・・  まずオープン化。これには2つのポイントがある。ひとつは、Kineticが製品としてオープン指向であること。連携対象のクラウドも、オープンソースやデファクト製品を意識している。同社によると、Kinetic APIは2014年1Qにオープンソースとして公開予定だ。この初期リリースは、OpenStackSwiftとAWS S3互換のRiak CSが対象となる。2つ目はコミュニティーだ。現在、同社が取り組んでいるコミュニティーはパートナー関連(後述)だが、今後、デベロッパーなどへも組織化が進めば、ユーザーからの意見集約は効果的なものとなろう。 
さらに、外部のOpen Compute ProjectやOpenStack ミュニティとの関係も深めている。Open Compute Projectとは、Facebookが自社データセンター建設に伴って始めたもので、データセンターの運用面経験の共有や各種の標準化を促進する組織だ。Kineticはそれらに準拠する意向のようである。また、OpenStackとはSwift対応で出来た関係を深め、より多くのベンダーとの関係強化を目指している。

<ドライブ> 

現在、Seagateが用意しているKineticドライブは、3.5インチのニアライン(Nearline drive)だが、暫時、他のHDDにも拡大される。下図のように通常のSASドライブとKineticドライブは概観は同じだ。しかし、SASドライブは2つのSASポートを持ち、SCSIコマンドで制御されるのに対し、Kineticドライブは2つのイーサーネットポートを持って、Kinetic Key-Value APIでコントロールされる。また、アプリケーション開発の便宜性向上のためにDrive Simulatorが提供される予定である。


<パートナー>
このプログラムの成功にはパートナーが鍵となる(Seagate Cloud Builder Alliance Partner)。Kinetic Open Storageの構築には、アプリケーション開発とドライブシステムの整備の2つの作業がある。これらをサポートするストレージ特化のインテグレータがパートナーだ。パートナーはKinetic適用のために、Seagateの最新ストレージ製品を利用して、現存するデータセンターのサーバーおよびストレージソリューショ ンをカスタマイズする。また、一方のアプリケーション開発は通常Eclipse環境で行われ、同社からこれら全体に詳細なドキュメントKinetic Open Storage DocumentationとKinetic Libraryが提供されているが、パートナーが支援することも可能だ。
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以上見てきたように、Seagate Kinetic Open Storageは非常に野心的である。
それは単に技術的なことだけでなく、ビジネスそのものを変えるかもしれない。これまでSeagateのようなドライブベンダーは、EMCやNetAppなどを主要な顧客としてきた。しかし、Kineticはこのビジネスモデルを覆すように見える。いや、より正確には、これまでのストレージソリューションだけではない新しい選択をユーザーに提供する。結果として、一部のソリューションはKineticに置き替わる。そのための戦略の鍵がオープン化とパートナープログラムだ。同社の見積もりでは、Kineticを上手く適用すれば、最大50%の費用削減が見込める。Seagateは、クラウド時代への変遷の中で、これまでのドライブベンダーから新たなソリューションベンダーへの脱皮に歩を進めたようだ。