2014年10月1日水曜日

HPとEucalyptusは上手く行くか!
         -OpenStack Silicon Valley 2014ー

OpenStack Silicon Valley 2014Computer History Museumで開かれた。
Mountain Viewにあるこの建物は、以前、Silicon Graphicsの本社だったものだ。
このイベントはOpenStack Community EventとしてSIerのMirantisがオルガナイズした。当日(9月16日)の参加者は590名。この数は少ないと思うかもしれないが、会場の制限によるものだ。チケットは完売。勿論、参加者の殆どがクラウド関係者やデベロッパーだ。集まったメディアはGartnerやIDC、そしてクラウドではお馴染みの451 Research、SiliconANGLE、The New Stack、TechTarget、eWeek、GigaOm、Web Host Industry Reviewなど。以下は主に、このイベントで最大の話題となったHP戦略について纏めたものである。

=HPはなぜOpenStackへ舵を切ったのか=
この日のトップを切ったのはHPのプレゼン。 前半はEVPでCTOのMartin Fink氏、後半はEucalyptusのCEOMarten Mickos氏だ。まず登壇したFink氏はこれまでのHPクラウドの活動を総括。氏によると1年弱前(昨年の暮れあたり)、クラウド開発の方向を完全にOpenStackに修正したとのこと。つまり、このままではただ体力を消耗するだけ、一方でOpenStackの開発が進んだことから、全てのリソースをこれに賭けようと決断した。我々がHelionの発表を耳にしたのは今年5月なので約半年前のことである。それより以前、HPはPublic Cloudを2011年に発表し、2012年5月からβ版でサービスイン。これに先駆け、同年4月、HPクラウドはハイブリッド化を目指したConverged Cloudとなった。このクラウドではObject Storageなど部分的にOpenStackを採用していたがHelionからは全面採用へと舵を切った。その意味でHelionはConverged Cloudのリブランドと言って良い。
=Eucalyptus CEOの心変わり=
Fink氏と握手を交わし、後半、壇上に立ったのは、今や時の人、Marten Mickos氏だ。氏の経歴は言うまでもないが、LAMPスタックで一世を風靡したオープンソースデータベースの雄、旧MySQLのCEO(2001~2008)だ。そのMySQLを旧Sun Microsystemsに売却し、Sunに1年とどまって、2010年にEucalyptus SystemsのCEOに就任した。その氏が再度、EucalyptusをHPに売却し、自分もHPのEVPでクラウドビジネスのGMとして指揮を執ることになった。2度目の変身である。周知のようにEucalyptusはUC Santa Barbaraで始まったクラウドプラットフォームのオープンソースプロジェクトで、その後の改良の結果、インストールの簡便性とAWS互換を売り物にしている。この日、氏はまず、まだHPとの最終契約が終わっていないことに言及し、だから正式な肩書はまだEucalyptusのCEOだと説明した。氏は過去10年間、オープンソースビジネスに従事して完全に成功してきたことを強調、そして2日前の日曜日(9月14日)にOpenStack Foundationの個人メンバーになり、これからはまじめに貢献すると語った。その際、参加者から起こったパラパラという複雑な拍手が印象的だった。というのは、これまでEucalyptusのCEOとしてOpenStackに挑戦的な発言を続けてきたからだ。その後、氏はオープンソースがクラウドでどれだけ重要かを説明し、とりわけハイブリッドOpenStackにとってEucalyptasのAWSデザインパターンが有用であることを強調した。さらに「Eucalyptusのチーム自体、OpenStackプロジェクトに比べようもないくらいに小さく、使い易さ(Easy of Use)やインストールの容易性(Easy of Installation)を狙ったもので、(暗に競合するのではなく)共存できる」とした。特に「AWSとのハブリッドを考えるとき、Public CloudのAWS APIはプライベートだが、Private Cloudで使うAWS APIはパブリックなものだ。何故ならオープンソースとして利用可能だから」。つまり、EucalyptusのAWSを上手く使えという示唆である。氏はさらに、自らの代弁としてクラウドオピニオンのひとつが、何故HPがEucalyptusを買収したかに触れ、それは、①AWSとのインターオペラビリティ、②シンプルスタート、③プロダクトフォーカスの3つだと説明した。そしてOpenStackは既に優秀なCephRiak CSMidoNet(ミドクラ)などのアドオン/付帯プロジェクトを持っており、Eucalyptusもそうありたいと述べた。

=新たなクラウド模様!=
このイベントの当日は、既報のようにRackspaceのホワイトナイト探しが終了した日でもある。今回の騒動が要因となってクラウド模様も変わった。Rackspaceは独自路線を歩む。最有力の買収候補と見られていたHPは、RackspaceからEucalyptusに乗り換えた。AWS互換機能は確かに魅力だが、本当にこれで良かったのだろうか。Mickos氏の要求は、その売り込みだけでなく、自分も売り込み、さらにEucalyptusをHPのポートフォリオに残すことのようだ。会場での参加者の話題はもっぱらこのことだった。同様に買収候補とされていたCiscoはMetaCloudを手に入れ、インタークラウド市場を目指しながら、UCS販売を強化する。もうひとつ、この騒動の陰で、9月11日、Red HatのCTO Brian Stevens氏がGoogleにスカウトされた。ポジションはGoogle PlatformのVP。Googleクラウドの責任者だ。これより先、RackspaceのSVPで製品開発の責任者だったMark Interrante氏も7月初めHPに入社している。SVPとなった彼も同様、HPクラウド開発の責任者となった。今回、傍観していたMicrosoftはAzure、IBMはSoftLayerを推進する。そして、体制を整えた後発組のHPとCisco。挑戦を受けるのはAmazon。こうして、ジグソーパズルの当面のクラウド模様は決まった。戦闘再開である。