2015年2月26日木曜日

IBMのSDS-IBM Spectrum Storage登場!

IBM InterConnect 2015がLas Vegasで開催(2/22-26)された。例年この時期はIBMユーザ会のPulseが行われていた頃である。ITの世界の企業活動は複雑だ。シリコンバレーのスタートアップのように最先端技術を追うもの、またIBMのように沢山の企業ユーザ向けに技術サービスを提供する会社もある。前者は限られた分野のファーストトラックを走り、後者はセカンドトラックだが、確かな技術を総合的に持ち合わせなければいけない。しかし、現代はクラウドやモバイル、IoTBig Dataなどがすさまじい勢いで動いている。IBMとてアクセルを踏んでカッティングエッジの領域に踏み込まなければならない。それが装いもあらたにIBM InterConnectとなった背景であろう。カンファレンスでは多くの発表があった。それらは代表的なプレゼンターによるプレスカンファレンスのビデオがあるので参照されたい。



=IBM Spectrum Storage!=
さてカンファレンスの期間中、筆者がもっとも注目していたのは直前に発表されたIBM Spectrum Storageである。何故かと言うと、前述の我々を取り巻く新たなIT諸現象は、爆発的に増え続けるストレージ問題を内在しているからだ。ストレージデバイスはHDDだけでなくSSDが浸透し始めたが、一部では未だ磁気テープも利用されている。そしてデバイスの位置もオンプレのセンター内だけでなく、クラウド上であったり、一部はモバイルなどの機器内にある。我々はこれらを総合的に効率的に運用管理する必要性に迫られている。このような課題解決を試みる取り組みが今回発表されたIBM Spectrum Storageである。

=モデルとなったIBM XIVとは!=
このシステムのモデルとなったのは同社のインテリジェントストレージIBM XIVだ。この製品は2002年創業のイスラエルのXIVが開発したもので、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたグリッドアーキテクチャー型ストレージである。今日でいうSDSの走りと言ってもよい。XIVは3年後の2005年にNextraという製品名で出荷を開始、そのXIVをIBMが2007年末$350Mで買収した。初期のXIV製品をGen1(Generation-1)と言い、IBMの買収後、2008年にはアーキテクチャはそのままで、ディスクドライブやコントローラなどのハード部分をIBM製品に置き換えたGen-2をリリース、さらに2011年にはより大型のディスクドライブのGen-3、2012-13年にはSSDや10GbEなどが追加されている。

IBM XIV Storage System Architecture and Implementation
もう少し詳しく見ていこう。
XIVのストレージは上図のようにInterface ModuleとData Moduleの2つのタイプがある。それらは汎用のCPUやメモリー、ディスク(含むキャシュ)などをもったコモディティコンピュータだ。2つの構成は同じだが、Interface Moduleは、さらにホストインターフェースやリモートミラーリング、データマイグレーションのためのFibre ChanneliSCSIのインターフェースを持つ。これらはグリッド配置となってInfiniBandでスイッチングされる。利用にあたって、従来型ストレージでは複数台のディスクからなる論理ボリュームを定義するが、XIVではボリュームを1MBのチャンク(塊-Chunk)に分割してモジュール上に均等配布する。XIVはさらにこのチャンクを2つ以上の異なるモジュール上にコピーし、信頼性の向上を図っている。

=激化する開発競争!=
ここまで見てくると、XIVは昨今話題のスケールアウトNASの一種だと気付くだろう。
先行するのはEMC Isilonこれも2010年にEMCがIsilonを買収したものだ。さらにNetAppもこの分野には全力投球しているこうして、従来型専用ストレージの一部はSDS指向製品へ向かい始めた。一方ではRed Hatが買収したCephGluster、独立系のRiakCloudian国産ではIzumoなど専用SDSソフトウェアも花盛りだ
発表によれば、Spectrum Storageには700項目の特許が含まれており今後5年間で$1B(1,200億円)が投入される。そして目玉はSpectrum Accelerateだった。これはXIVのインテリジェンス部分をソフトウェアとして抜出したもので、今後、XIVではないユーザが保有する汎用機器への適用やクラウド上への展開も可能となる予定だ。SDS開発競争は熾烈化を極めている。専業ハードベンダにとっては死活問題であり、新興ソフトベンダにとっては絶好のチャンスだ。この開発競争からIBMがどう抜け出てくるか見届けたい。