2015年3月31日火曜日

ホステッドプライベートクラウドのプレイヤー達!

前回は注目のBlue Boxクラウド(詳細はここ)について述べた。
Blue Boxは‟Hosted Private Cloud”に特化したプロバイダである。周知のように、Public CloudではAmazon Web ServiceMicrosoft AzureIBM SoftLayerが追撃中だ。そしてこのところはOpenStackを中心としたPrivate Cloud市場が立ち上がりつつある。このような市場環境の中、今、注目を集めているのがPrivate Cloudをホスティングしてくれる-ホステッドプライベートクラウド-だ。

=Forrester Waveレポート=
調査会社のForresterから、この市場を分析したレポートForrester Wave Hosted Private Cloud, 4Q '14が出ている。これまでPrivate Cloudを構築するには、①商用Private Cloud Softwareや、②既成のConventional Software、③アプライアンス化されたCoverged Solution、さらには、④オープンソースの利用などがあった。しかし運用管理の煩わしさから、出来れば、データ管理の絶対化(主権)や自由なシステム環境制御など、Private Cloudならではの特徴あるクラウドサービスが求められていた。それがHosted Private Cloudだ。実際のところこのサービスには2つある。ひとつはPrivate Cloudのホステッド(Hosted)版、もうひとつはPublic Cloudを使ったデディケーテッド(Dedicated)版だ。この市場は始まったばかり、カスタマイズやハイブリッド化、自動化などの課題もある。

=市場のツートップは独立系=
市場をリードしているのはVirtustreamとDatapipeの2社だ。両社は共に独立系でデータセンタやホスティング業から進展した経緯から、企業ニーズを熟知している。以下、概要を示す。
  • Virtustream ・・・ Virtustreamはメリーランド州のベセスダ(Bethesda)で2009年にスタート。すぐにエンタープライズに特化したビジネスを開始。独自開発したクラウドソリューションのフラッグシップxStreamではμVM上でアプリを稼働させる。また、このプラットフォームはパフォーマンス計測技術とリソース管理技術に特徴を持ち、多くの企業ユーザを獲得。現在、米国と欧州にデータセンタを開設し、ComputeとStorageの両方共にホステッドとデディケーテッドを提供している。今年2月初めには日本のCTCとの提携も発表。
  • Datapipe ・・・ Datapipeは1998年にWebホスティングとしてニュージャージ州のホーボーケン(Hoboken)で創業。その後、ドットコムバブルで急成長して、マネージドホスティングに転身。そしてクラウド時代が到来し、自社開発のクラウドソリューションの提供を開始した。同社のフラッグシップStratosphereはApache CloudStackをベースとしたものでVirtustream同様、ComputerとStorage共にホステッドとデディケーテッドを提供している。同社はまた2010年末より、Amazonユーザ向け運用代行のマネージドサービスManaged Cloud for AWSをスタート。今年1月20日にはMicrosoft AzureにファミリアなプロバイダGoGrid買収してAzureのマネージドサービスManaged Cloud for Microsoftも開始した。
=追う第2グループ!=
VirtustreamとDatapipeを追う第2グループはCSC、HP、Del、Blue Box、Joyentだ。CSCは独自開発のプラットフォームBizCloud VPE and BizCloud Dedicated、HPはOpenStackベースのHellion Managed Private Cloud、DellはVMware vCloud Directorを使ったDell Cloud DedicatedBlue BoxはOpenStack、JoyentはOpenSolaris系アプリ対応の独自プラットフォームSmartDataCenterを提供している。うちBlue BoxとCSC、Dellの3社は、Computeではデディケーテッド、Storageはデディケーテッドとホステッドの両方をサポート。HPはComputeは両方、Storageはデディケーテッドのみ、JoyentはComputeとStorage共に両方をサポートしている。

=米3大キャリアはVMware基盤=
第3グループを構成するのは主に米3大キャリアだ。
そして何と、AT&T Private CloudCenturyLink Dedicated CloudVerizon Enterprise Cloud Private Editionの3つ共にVMwareのvCloud Directorがプラットフォームである。Verizonはクラウド進出にあたり、2011年1月にTerremark Worldwideを、Centurylinkは同2011年7月にSavvisを買収して体制を整えた。TerremarkもSavvisもクラウドを既に手掛けていたデータセンタだ。ここでAT&TとCenturyLinkの2社はComputeはデディケーテッド、Storageはデディケーテッドとホステッドの両方、VerizonはComputeとStorage共にデディケーテッドをサポートしている。
=欧州のホステッドプライベートクラウド市場=
Forresterのレポートでは米国だけでなく、普段、あまり馴染みのない欧州のクラウドについても触れられている。フランスからは最大キャリアのOrange (旧フランステレコム)がこのHosted Private Cloud市場に参入。同社のクラウドプラットフォームOrange Private Cloud Solutionsは米BMC(ヒューストン)Cloud Lifecycle Management がベースで、ComputeとStorage共にデディケーテッドのサポートだ。 英国ではCanopy(ロンドン)とロンドンの南、ケント州ビンターズ・パークのVooServersがこの市場に参入している。CanopyのプラットフォームはVMware vCloud Dirctorベースで、VooServersは英国製のOnApp(ロンドン)だ。

=変わるクラウド市場!=
クラウド市場ははっきり変わってきた。
Public Cloud市場は一段落し、Private Cloudが浸透し出した。そして2つを連携するHybrid Cloudの重要性が叫ばれている。成熟の域に達しだしたPublic Cloudに対し、Private Cloudはまだまだこれからだ。この市場を活性化させるサービスが今回取り上げたHosted Private Cloudである。このサービスが普及すれば企業の負担は解消され、Private Cloudの普及に弾みがつく。これまで乱立してきたプロバイダーは立ち位置を問われている。Public Cloudでビジネスを継続するのか、Private Cloudをサポートするのか。となれば、SIerとして生きるのか、ホステッドビジネスに転じるのか、さもなければ、淘汰されるのみだ。

2015年3月11日水曜日

Blue Boxのホステッドプライベートクラウド!
                            -Private Cloud as a Service-

日本では馴染みが薄いが、今回は、今、注目されているBlue Boxについて紹介して見ようと思う。というのは、昨年下期は大手企業による中堅クラウド企業の買収が幾つかあったEucalyptusCloudscalingMetaCloudなどだ。オープンソースのEucalyptus以外は、今や人気のOpenStackベースである。しかし、彼らには事業継続の資金が集まらなかった。市場はPrivate CloudではOpenStackだという流れが鮮明になっているにも関わらずである。投資家たちはこれらスタートアップを育てる時期が終わったと見て、売り抜けたのだ。彼らは市場は大手数社の手の内にあり、Eucalyptusを買ったHP(詳細はここ)やMetaCloudのCisco(詳細)、さらにはCloudscalingのEMC(詳細)などはチャレンジャーだという認識だ。そのような中にあってBlule Boxは違っていた。 

=これまでに集めた資金は30億円超!=
同社の創業は2003年8月。iTunesが流行り出した頃だった。開発には紆余曲折があった。そして辿り着いたのがOpenStackによるPrivate Cloudだ。2012年1月のSeries-Aは$4.3M(5.16億円)。2013年10月にもSeries-Aで$1.5M(1.8億円)。2014年3月にはDebt Fainancingで$3,3M(3.96億円)。Sries-Bは昨年10月に$10M(12億円)、続いて今年1月に$4M(4.8億円)が追加され、総計$26.6M(約32億円)となった。中堅他社が資金繰りから買収される中で、昨年秋から年初めにかけて$14M(16.8億円)を集めたのだ。(1㌦=120円換算)

=Blue Box Cloudとは何か!=
 ではBlue Boxの戦略はどうなっているのか。左図のように彼らのポジションはPublic CloudとPrivate Cloudの中間だ。Public Cloudは周知のように、①弾性(Elasticity)があり、②経済的(Open Economics)で、③使い易く(Easy of Use)、④適用が短時間(Time to Implement)で済む。一方、Private Cloudはこれらの要素には難があるが、自営センター内であるため、①データの主権(Data Sovereignty)や、②システムの環境制御(Environmental Control)は十分であり、③コストの予測性(Cost Predictability)があること、さらに、④センター内のLAN速度並みのハイブリッド化(Hybrid Capabilities with LAN Latency)が出来る。つまり、Blue Box Cloudは、Public CloudとPrivate Cloudの難点を補うクラウドサービスを目指している。キャッチフレーズは‐Private Cloud as a Service(PCaaS)‐、狙いはPrivte Cloudをサービス提供しようというものである。 

=Blue Boxの仕組み!=
次にBlue Box Cloudの仕組みについて見てみよう。
Blue BoxはPublic Cloud as a Seriveのために、①OpenStackをインフラとし、②専用ハードウェア-Dedicated Hardware上で、③シングルテナント-Single Tenantとして提供される。ユーザは自社のアプリケーションを開発するだけ、後は彼らがこのクラウド上に展開してくれる。Blue Boxのサービスはオーケストレーション技術を使い、ネットワークもデータベースも注文通り、仮想化だってKVMでも人気のDockerだって構わない。個々のユーザニーズに応じたオーダーメイドで、Public Cloudのセルフサービスとは大違いだ。つまり自社センタのクラウドがBlue Boxに移動したような気になる。昨年11月のOpenStack Summit Parisでは、①SwiftベースのObject Storage、②Nimble StorageによるCinderのBlock Storage、③Tesoraの技術によるOpenStack TroveのDBaaS(DataBase as a Service)、④Juniper NetworksのFirewallなどが追加された。

=この路線を突っ走れるか!=
Blue Boxは本社のあるシアトル(西海岸)とアシュバーン(東海岸)、チューリッヒ(欧州)の3センターで現在、PCaaSを運営する。この2月には米大手SIerのAlliance Technology Ggroupと提携し、ターンキーのソリューション提供も開始した。しかしこの分野はDatapipeやVirtustreamなどが先行している。Blue Boxの強みは、このところPrivte Cloudで人気のOpenStackだ。 先月の25日には、HPのOpenStackクラウドHelionにとって初の大型取引がドイツ銀行との間で決まった(プレス発表)。独自OpenStackディストリビューションでSIビジネスを走るMirantisは、何と$100M(120億円)という投資をSeries-Bで集めた(プレス発表)。Blou Boxがこの流れに上手く乗ることが出来ればレースから抜け出せる。