2015年4月25日土曜日

AmazonがAWSの財務内容発表、スピンオフへ助走!
        -今年度売り上げ$5Bへ、1Q売上利益率は17%-

米国時間4月23日、Amazonから第1四半期の決算が発表された。
そして、とうとう正確なAWSの財務内容が明らかになった。これは今年1月、昨年度決算発表時のカンファレンスコールで約束したものだ。これまでこのブログでも2011/32014/10とAmazonクラウドの売り上げについて言及した。しかし、これまでの数字は、AWSは「その他(other)」の項に含まれ、推測の域を出なかった。そんな中、昨年3Q決算では、Amazon本体がインフラ投資の先行で赤字となって、AWSへの投資なども不安視された。

=昨年度売り上げは$4.6B(約5,500億円超)!
今回、これらの不安を払しょくするかのような数字が出た。
発表されたデータはかなり詳細だ。Q1 2015 Financial Result(Fig.1)を見ると、昨年度の四半期別売り上げと収益が解る。2014年度のAWS売り上げは$4.644B(約5,573億円…120円/$)。そして、今年1Q売り上げは$1,566M(約1,880億円)、年間伸び率は49%となった。
      • 1Q=$1,050M(売上)/$245M(収益)
      • 2Q=$1,005M/$77M
      • 3Q=$1,169M/$98M
      • 4Q=$1,420M/$240M
      • 1Q/2015=$1,566M/$265% 
Fig.1) Q1 2015 Financial Result
ちなみに4Q 2014 Financial Result(Fig.2)までは、AWSの売り上げは「その他」で、この「その他」とは、小売り以外のクレジット関連など全てを意味する。Fig.2をもとに昨年度4四半期分の「その他」を合算すると$5,597Mとなり、Fig.1の発表値より$953M、率にして20%多い。

Fig.2) Q4 2014 Financial Result

=AWSはスピンオフ出来るか?=
決算発表時、CEOのJeff Bezos氏は、今年、AWSは$5B(約6,000億円)ビジネスになり、まだまだ成長すると宣言した。1Qの数字で見る限り、前期より収益は7.5%増加し、営業利益率(Operating Profit Mergin=利益÷売上)も16.9%と好調だった。昨年度を振り返ると、1Qは$245M(利益)/23.3%(売上利益率)、その後はもたつき2Qは$77M/7.7%、3Qは$98M/8.4%、4Qは持ち直して$240M/16.9%となり、昨年度の利益合計は$660M(790億円)、年間営業利益率は14.21%である。

業界筋はスピンオフの準備は整いつつあると見る。
調査会社Synergy Reserchの報告によると、2014年度のクラウドインフラサービス市場は推定で$16B(1兆9200億円)、AWSはその約30%を占めている。もし年内にスピンオフ、そして株式公開となれば、知名度の一段の向上だけでなく、資金調達も楽になり、今後一層の飛躍が期待できる。発表のあった4月23日、木曜日のAmazonの終値は$389.99、市場が閉まった後のAWS財務公表で、その後、7%跳ね上がり$416.50となった。




2015年4月21日火曜日

CiscoのIntercloud FabricがGAになった!

とうとうCisco Intercloud Fabric(以下、Intercloud)正式リリース(GA-General Available)になった。米国時間4月20日のことだ。昨年3月の発表以来、昨秋には2.1.1a、年末には2.1.2、そして今回のGAが2.2.1、ほぼ1年という早業だ。 Intercloudは周知のように複数プロバイダーのPublic Cloudを連携させた広大なネットワークだが、利用する企業ユーザから見れば、ハイブリッドクラウド基盤のひとつと考えても良い。現在、このネットワークではAmazon Web ServiceMicrosoft Azureと自社Private Cloudの連携が出来るが、今後は整備が進むCiscoパートナーの各種クラウド群との接続も可能となる。

=ハイブリッドが基本、Intercloud Fabric Architectureの仕組み!=
念のため、Cisco Intercloudのポイントを押さえておこう。
Intercloudとは、Private Cloud上のVMイメージを変換して提携プロバイダーのPublic Cloud上で実行するものである。前述のようにハイブリッド基盤のひとつとはそういう意味だ。ユーザ企業はこの機能を使い、自社クラウドの運用費用削減や繁忙日のオーバーフロー対策などに役立てる。連携にあたって、外部クラウドにロックインされることはない。ここがIntercloudのウリだ。つまり、ユーザは自由に外部プロバイダーを乗り換えることも出来る。このような複数クラウドが織りなすネットワークを「ファブリック(Fabric-織物)」という。このIntercloud Fabric(下図)を構成するコンポーネントは3つ。まず、①ユーザ側にあって、どのようなクラウドやサービスがネットワーク上にあるのかを管理するIntercloud Fabric Director、次に、②自社と外部クラウドを安全に接続する仕組みがSecure Cloud Extention、そして、③外部クラウドプロバイダー上の実行環境がIntercloud Fabric Provider Platformだ。

Intercloud fabric Architecture
上図において、左側がビジネス(企業)サイド(Intercloud Fabric for Business)、右がプロバイダサイドSP:Service Provider(Intercloud Fabric for Providers)である。企業サイドにはIntercloud Fabric DirecterとSecure Cloud Extention、プロバイダサイドにはSecure Cloud ExtensionとIntercloud Fabric Provider Platform(以下、ICFPP)が含まれる。

=外部クラウド接続を可能とするIntercloud Fabric Director!=
もう少し細かく見てみよう。
まずユーザ側にインストールされるIntercloud Fabric Directorは、ユーザとIT管理者にそれぞれポータルを提供する。IT管理者はこのポータルからファブリック全体を管理し、ユーザはPublic Cloudと連携させるワークロードの作成や停止などを実行する。このポータルからのマイグレーション(Private Cloud→Public Cloud)指示がトリガーとなって当該するVMがPrivate Cloudで稼働中であればシャットダウンし、連携するPublic CloudのVMフォーマットに変換される。これで該当するVMをPublic Cloudに送り出す準備が整う。

Intercloud Fabric Director Features
=セキュアに外部接続するSecure Cloud Extention!=
次に、Private CloudとPublic Cloud間の連携を見よう。
IntercloudではセキュアなPrivate Cloud環境をPublic Cloudまで拡張させる。この役目を果たすのがSecure Cloud Extentionだ。これには企業サイドのIntercloud Extenderとプロバイダサイドに入るIntercloud Switchの2つがある。これらのモジュールが対となってセキュアなLayer2を延伸してTLSトンネルを確立し、また、Intercloud Fabric環境下のVM間通信にも同様なセキュア環境を提供する。

Secure Cloud Extension
=外部クラウド上の実行環境、Intercloud Fabric Provider Platform=
こうして送り込まれたVMイメージをプロバイダ側で実行するイネーブラがIntercloud Fabric Providor Platform(ICFPP)だ。 ICFPPはPrivate Cloud上のIntercloud Fabric Directorと連携して、VMイメージの実行のためにPublic Cloud側のインフラを展開させる。Intercloudではこれらの通信のためにCloud APIを定義しているが、プロバイダー側で使うPlatform固有のAPIは異なるので、Adopterで変換・実行する。例えば、VMの起動や停止などの要求をIntercloud Fabric Director経由で受けると、それをPublic Cloudのインフラに合わせてAdopterで変換してプラットフォームに引き渡すといった具合だ。VM実行時の課金やログ情報などはICFPPからプロバイダーのOSS(Operation Support System)ないしBSS(Business Support System)に吐き出され、必要な処理が行われる。ただ、この際、課金はVM使用料のみで、Intercloudのサービスには発生しない。尚、現段階でサポートされているAWSとAzureは、Intercloud Fabric Directorで直接ネイティブAPIを使用しているので、プロバイダー側にはICFPPもなく、Adopterもない。GAでサポート対象となっているGuest OSは、RHEL 6.0 - 6.5(64-bit)、CentOS 6.2-6.5(64-bit)、Windows 2008 R2 SP1、Windows 2012、Windows 2012 R2、SUSE Linux 11 SP2 and SP3の6種である。

Intercloud Fabric Provider Platform
=プライベートクラウドにはMetacloudのOpenStackを!=
さて、InterCloudは魅力的だが、それ以前に、うちではまだPrivate Cloudも導入していないという企業も多い。そこで同社ではCisco OpenStack Private Cloudを整備してきた。実際のところ、このエディションは昨年9月に買収したMetacloudのプラットフォームだ。MetacloudはOpenStack-as-a-Serviceをビジネスモデルに掲げ、独自OpenStackディストリビューションで企業のPrivate Cloudを構築支援し、24Hの遠隔監視を提供してきた。Ciscoの提供するPrivate Cloudはこの技術が引き継がれたものである。このシステムの販売はCiscoパートナーがパートナー自身のPublic Cloudと組み合わせて行う予定だ。この方式は、現在、NTT傘下のDimension DataがCisco Hybrid Cloud Bundleとして提供しているが、利用に当たっては費用が発生する。

=普及に向けて!=
Intercloud Fabricはリリースされたばかりだ。
課題は幾つかある。まずはパートナーのクラウド連携を加速させることだ。現在、パートナーとして60社以上が参加を表明し、世界50ヶ国350のデータセンタで展開(3/11現在)が予定されている。AWS、Azureに加えて、これらが動き出せば企業ユーザもついてくるだろう。ただ、これはPublic Cloudの価格競争を加速させることになるかもしれない。ユーザにとってはあり難い話だが、パートナーのプロバイダーは及び腰にならないだろうか。次に機能強化だ。現在のIntercloudは、VMイメージの転送実行機能を提供する。この形の延長上で、Private Cloud側に残ったアプリと転送されたアプリが本来連動されていたものなら、VLANを介してハイブリッドとして稼働する。しかし、転送されたVMとPublic Cloud上で固有のサービス機能(Amazon S3など)を利用して作られたアプリなどの連携では、クラウドの境界に仮想ルータを置かなければならない。もし、これらの制約が次期版などで緩和されれば、プロバイダーの参加も企業ユーザの利用も大きく進むだろう。真のIntercloud、それは皆の願いである。

2015年4月15日水曜日

HPからのメッセージ -Helion Public Cloudは継続-

HP Helionに関するNew York Timesの記事が出たことは既報の通りだ。
これに対し、インタビューを受けた本人から、Helion Public Cloudが停止されるかのような解釈がされたことを否定するメッセージが流された。
以下はその文意訳である。

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2014年5月、新しいGlobal Cloud Portfolio Helionと共にビジョンと戦略を発表しました。その時、オープンソース技術とハイブリッド提供について概説しました。-それはこれまでの伝統的なITやPublic Cloud、Private Cloud、Managed Cloudにわたるものです-そして企業が迅速に、かつコストや管理リスクを低く抑える先進のクラウドコンピューティングを構築し、管理、実行できるクラウドポートフォリオを紹介しました。

今日、この戦略とビジョンは全力で継続されています。
前週、私の発言がメディアに引用され、それがHPがPublic Cloudを止めるのではと解釈されことは本当ではありません。ハイブリッドITのビジョンと提供に関する我々のポートフォリオ戦略は以下でハイライトされるように強力に続いています。
  •  HP operates one of the largest OpenStack-based public clouds. 
  •  We operate a fast growing hosted, virtual private cloud
  •  Our private cloud and managed private cloud leadership continues to win accolades
  • We see a clear and consistent pattern where enterprises are becoming Internal Service Providers.
  • For workloads fit for Public Cloud, customers desire multiple options.
今日、我々は企業内部のサービスプロバイダーのためのハイブリッドサポートポートフォリオを構築しています。これには純粋なPublic Cloudやテレコムプロバイダー、そしてローカルなマネージドサービスの会社群がパートナーとして含まれます。我々は純粋なPublic Cloudだけをしている訳ではありません。我々は戦略を変更していません。事実、我々はHP Helionポートフォリオ全体でハイブリッド提供の支援を速めています。Eucalyptusの買収でハイブリッドの一環としてAWSサポートを加えました。さらにクラウド製品の強化に努めています-ネイティブアプリやCloud Foundryへの投資(あなたが試してみることが出来る)、DockerやKubernetes-などです。これらは全ての重要な要素が更なる大きな柔軟性やスピード、相互接続性を増して、クラウドサービスタイプ(IaaSやPaaS)の境界は増々ぼやけてきます。我々はまた、複数のPublic CloudやPrivate Cloudにわたり、顧客のハイブリッドポートフォリオの全体を仲介管理するCloud Service Automationなどのツールを提供します。今日、我々の成功は、能力と企業のクラウド需要を満たすことに基づきます。HPや我々のパートナーを通して、オープンソースやオープンスタンダード、相互互換性を持つハイブリッドサービスを企業内部に、長期的に展開するためのプラットフォームを構築します。

いつものように、我々は真っ先に、顧客とパートナーの話を聞くでしょう。


Thanks!
Bill Hilf
SVP, Helion Product Management

2015年4月10日金曜日

HPからアプライアンスなど続々・・・
          -Hellion Rack、Cloudline、Content Depot!
                -Helion Public Cloudは?

HPから3月末、OpenStackベースのアプライアンスHP Helion Rackが出た。
これはハイブリッド化の動きを睨みながら、その前提となるプライベートクラウド市場に向けたものである。Helionは昨年5月からスタートして約1年となるクラウド戦略ブランド名だが、その前身はConverged Cloudだ。HPの判断はクラウド戦略を完全にOpenStackベースにすることだった。その回答がHelionである。

=プライベートクラウド向けのHP Helion Rack=
HP ProLiant DL360
今回登場したHelion RackはProLiantにIaaSとしてHelion OpenStack、PaaSにCloud Foundaryをプリコンフィギュアードしたものである。対応するラックサーバはHP ProLiant DLだ。このサーバにOenStackとCloud Foundaryを組み合わせ、工場でインストールとチューン/テストを実施して出荷する。これによって企業ユーザは導入からPrivate Cloudの展開までを大幅に短縮できる。ユーザの期待は、①クラウドネイティブアプリの開発が出来ること、勿論、②迅速なインフラ展開が必須、そして、③安全で各種の標準化に準拠してワークロードの拡張性ができることなどだ。導入にあったては DLシリーズのどのモデルにするか、構成はどの程度かなど、まずはHPのコンサルティングを受けることがよさそうだ。 

=OCP仕様のプロバイダ向けHP Cloudline=
HPはHelion Rackより先の先月初めにはHP Cloudlineも発表している。目指すはサービスプロバイダ向けのテイラードシステムである。このサーバは台湾のFoxconnとの間で設立した合弁会社のODM製品である。一般にOEM(Original Equipment Manufacturing)は委託者の設計で受託者が製造、委託者ブランドで出荷する。対して、ODM(Original Design Manufacturing)は設計から製造まで受託者が行い、委託者ブランドで出荷する。つまり、Cloudlineは設計から製造までHPは関与せず、Foxconnに任せた格好だ。そのCloudlineの最大の特徴はOCP(Open Compute Project)に準拠していること。そしてプロバイダ向けのため、各ユニットに電源やファンはなく、それらはプロバイダのラックから供給される設計だ。製品ラインナップは命令処理主体のコンピュート向け、ストレージ依存度の高いものなどがある。 

=HP Helion Content Depot= 
HPからは既にHP Helion Content Depotも出ている。今日、データの90%は人間のインタラクションから発生すると言われている。これら膨大なデータ管理の痛みを和らげるのがHelion Content Depotだ。このアプライアンスはバックエンドシステムとしてOpenStack Swift(オブジェクトストレージ)を搭載し、フロントのOpenStackベースのHelionと連携する。企業ユーザはこれを自社データセンタ内に設置するだけでなく、HPパートナのデータセンタに置くことも出来る。



=Helion Public Cloudは?=
以上見てきたように、Helion関連サーバの拡販に力が入ってきた。
HPファンやOpenStackファンなら、これらの製品を選ぶかもしれない。ただ、市場には多くのアプライアンスが出回っている。古くはVMwareを搭載したVCEこれは進化してVCE Foundation for Federation Enterprise Hybrid Cloudとなった。最近ではMicrosoftがDellと組んで始めたCloud-in-a-BoxのCloud Platform Systemなどだ。しかし、HPのこのようなアプライス化の動きは、何か戦略変更の予感がする。折も折、4月7日、Helionビジネスを統括するSVPのBill Hilf氏はNew York Timesのインタビューに、「ユーザが我々からコンピュータを買うように、クラウドでも借りてくれると考えていた“We thought people would rent or buy computing from us,”」、しかし、「そう短絡的ではないことが解る“It turns out that it makes no sense for us to go head-to-head.”」と答えた。思い出してほしい。昨年10月、CEO Meg Whitman女史はHPを2つの会社に分離することを発表した。ひとつはPCやプリンタを扱うコンシューマ向けのHP Inc.、もうひとつはエンタープライズ向けのHP Enterpriseだ。冷静に考えると、このような大転換期では、Helionは、ビジネスとして成り立ち難いPublic Cloudよりも、アプライアンス化に向かうことが必然なのかもしれない。次なる変化を注目したい。